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あなたは大丈夫? 入園・入学前に「科学的」に見直したい7つの子育て

あなたは大丈夫? 入園・入学前に「科学的」に見直したい7つの子育て

お子さんの入園・入学は、大きな節目。喜びとともに不安を抱き、いっそう子育てに取り組もうと意気込むパパやママもいらっしゃるでしょう。しかし、我が子を想っての行動であっても、やり方によっては成長に悪影響を与えることも。

そこで、7つの気になる子育て習慣を、東大卒の医師・森田麻里子先生に質問。その良し悪しについて、科学的な観点で解説いただきました。さらに、実験で検証された事実を踏まえつつ、2児のママでもある先生に実際の子育てを踏まえた意見も教えてもらいました。

入園・入学を大きなターニングポイントとして、子どもとのコミュニケーションを変えるチャンスだと捉えると良いでしょう。

「家事の間、子どもに動画を見せ続ける」のは続けてもOK

「家事の間、子どもに動画を見せ続ける」のは続けてもOK

調理や掃除などで手が離せないとき、子どもにテレビやスマホを与えて大人しくしてもらう、というパパやママは珍しくありません。ただ、そこに少し引け目を感じてしまう方もいらっしゃると思います。

では実際、子どもに動画を見せ続けるのは、どのような効果があるのでしょうか? 森田先生に聞いてみました。

動画を見ることで語彙力がアップ!

「テレビなど動画の視聴は、子どもの年齢によって影響が異なります。アメリカの研究者は6~7歳の子どもの読解力・語彙力などを調査した結果、3歳未満のときにテレビを見ていた時間が長い子は語彙力がわずかに低下。しかし、3~5歳の時に長くみていた子は語彙力がわずかに上昇したと報告しています」

森田先生が言うには「この結果は年齢によって子どもの理解力が異なるため」だそう。さらに「3〜10歳の頃に教育番組を見ていた子どもは高校に成績が良くなった」という研究結果もあるそうです。

これらの結果から、入園を控える満3歳の子どもに動画を見せておくことは、教育的な内容なら良い効果をもたらす可能性があると言えます。補足しておくと、動画が2歳の子どもに必ず悪影響があるわけというではありません。家事の際中に子どもを落ち着かせるために、動画を見せるなど短時間の利用は問題ないでしょう。

アドバイス:スマホで見せる場合には注意が必要

最近ではスマートフォンを与える保護者の方は多いと思います。しかし、動画を見せるならテレビとスマホどっちが良いかは科学的な検証されていないそう。ただ、森田先生は自身の子育てを踏まえて「テレビで見せる方が良い」と話します。

「YouTubeだとレコメンドなので、子どもが予期せぬ動画を見てしまう可能性があります。対して、DVDや有料の動画は内容も精査されているものが多いですし、見せる動画も保護者が管理しやすい。また、動画を見せるデバイスとしては、スマホよりはテレビなど大きな画面のほうが姿勢も悪くなりにくいでしょう。何を見ているかも把握できますし、動画の管理観点ではテレビ画面の方が優っていると思います」

なお、森田先生は小さい子どもには過激なシーンを含む動画は見せないそう。「大人が暴れていることを子どもに上手に説明できないのが理由です」。暴力的な動画は分別がつく歳になってから見せた方が無難とのことでした。

「子どもにおもちゃを与えて遊ばせておく」のは教育にも良い

「子どもにおもちゃを与えて遊ばせておく」のは教育にも良い

子どもにとって、お気に入りのおもちゃはまさに宝物。入園・入学前ともなると、おもちゃを渡しておけばおもちゃ遊びに夢中になることあるでしょう。

保護者にとっても重宝するおもちゃですが、子どもの成長にどのような影響を与えるのでしょうか?

大人が適切に関わることが重要

おもちゃは、子どもの遊びを充実させるための道具。そもそも遊びは、40以上の研究をまとめた論文で「社会的感情的な問題が減り、言語能力が向上して、発達が促されること」が確認されています。

必然的に、子どもがおもちゃで遊ぶのは教育に大きく寄与します。ただし、子どもだけで遊ばせるだけでなく、パパやママが積極的に関わりを持つことも重要です。

「1歳半か3歳までの子どもを対象に、おもちゃの与え方を研究したところ、大人が子どもをサポートしてあげると効果がありました。人形や食器などのおもちゃをランダムで与えるより、人形の前に食器を置くなど遊びの“ストーリー”を連想させる方がポジティブな社会的行動が見られたそうです。ひとり遊びは想像力を養う役割がありますが、子どもの遊びに保護者が適切に関わることも大切なのです」

アドバイス:いろんな遊び方ができるおもちゃがオススメ

どのようなおもちゃが良いかは具体的な研究事例は報告されていません。ただ、森田先生自身は「子どもの想像力が掻き立てられる物が良いだろう」と考えているそうです。

「おもちゃは、あくまで遊ぶための“触媒”です。子どもが興味を持つものであれば何でも良いと思いますが、子どもが幼いなら自分なりに遊べる物がより望ましいでしょう。例えば、レゴやお人形など、いろんな使い方や遊びに用いられる物が良いと思います」

「子どもに絵本を読み聞かせる」のは継続すべき

「子どもに絵本を読み聞かせる」のは継続すべき

子どもが大好きな、絵本の読み聞かせ。せっかくなら、子どもにとって勉強になる内容を選びたいというパパやママもいらっしゃるはず。

しかし、いったいどのような本を与えたら良いのか? そもそも、絵本の読み聞かせは勉強になるの? 子どもの成長と絵本の関係について確認していきます。

読み聞かせる+話しかけがベスト

絵本が言葉を学ぶのに適していることは周知の事実。絵本を読み聞かせるのは大正解ですが、ただ読むだけでなく「子どもに簡単な質問を投げかけることで総合的に能力を伸ばせる可能性がある」と言います。

「1歳半〜2歳の間の大人と会話した回数や大人が話した言葉の数が、10年後の知能指数や言語能力に関連していたというデータがあります。さらに読み聞かせの回数や種類が多いほど絵本を読んでいる時に脳が活性化することもわかっています」

絵本の読み聞かせを通じて子どもに継続的に話しかけることで、子どもはより読み書きができるようになる可能性があります。子どもがねだったときだけでなく、積極的に読みかせると効果が高まるかもしれません。

アドバイス:子どもと一緒に絵本を楽しもう

「絵本の読み聞かせを知育のために、イヤイヤやっているなら止めた方が良いと思います。親が乗り気でないことが子どもに伝わり、悪影響を与えるかもしれないからです。何よりも重要なのは親子の時間を楽しむこと。知育を望むならパパやママと一緒に盛り上がれることにするべきです」

さらに森田先生は、子どもは親に愛されているだけでスクスクと育ってくれると補足。絵本を読む際は、子どもとのコミュニケーションの一つだと思うと良いでしょう。

なお、昨今では親も泣ける絵本があります。例えば『おまえ うまそうだな』は森田先生もイチオシ。もちろん、定番や人気の絵本も素晴らしいとのこと。入園前なら『うずらちゃんのかくれんぼ』、入学前なら『どろんこハリー』、他にも『「和」の行事えほん』などもオススメだそうです。

「小学校に入る前までに読み書きを覚えさせる」知育効果は高い

「小学校に入る前までに読み書きを覚えさせる」知育効果は高い

お受験をしなかったとしても「入学前には文字を読み書きできるようにしてあげたい」と、多くの保護者が思うことでしょう。一方で「勉強は後からできるから、今は子どもに伸び伸びとさせてあげたい」という方もいらっしゃいます。

どちらの言っていることも正しく、納得できる考えですが、科学的にはどうなのか? 森田先生に聞いてみました。

入学前の教育は最も効果が高い

結論から言うと、入学前の教育は非常に効果が高いと言われています。ベーベル経済学賞を受賞した労働経済学者のヘックマン博士は「就学前の教育が、最も投資に対する効果が高い」と言いました。

「その根拠となったのがペリー就学前プロジェクトです。3〜4歳のアメリカ人の子どもに2年間教育プログラムを行い、40歳まで追跡。その結果、教育を受けた子とそうでない子の学力や所得などに大きな差が出たんです」

早期から教育的な関わり方をすることは大切ですが、文字の読み書きについては必ずしも早期に教える必要はないでしょう。森田先生は「興味のある子にはドンドンやらせてあげると良いですが、本人に興味がないのに勉強を強制するのはNG」と付け加えます。あくまでも子どもの自主性や子どもに適した内容を教えることが大切だと、教えてくれました。

アドバイス:参考にするなら「モンテッソーリ教育」が安心

最近では「脳の開発」をうたう教育メソッドが散見されますが、必ずしもきちんとした研究結果に基づくものではないようです。また、特別なトレーニングを積むことで特別な能力が身に付くという話も個人の経験談としては否定しませんが、裏付けとなるデータがあるとは限りません。鵜呑みにするのは避けたほうが良いでしょう。

では、どのような教育が良いのか? 森田さんに聞くと「幼児教育なら、実績がある『モンテッソーリ教育』が安心」と回答。これは「子どもには、自分を育てる力が備わっている」ことを前提に、環境を整えて子どもの自発的な成長を促す教育方針です。

もちろん、これはモンテッソーリ教育が良くて、他がダメというわけではありません。どんな教育方法であっても1つの“型”と思って参考程度にすること。森田先生は「教育の考え方や情報を知って、自分の家庭に合っているものだけを取り入れれば良いでしょう」と説明してくれました。

「感染症に気にして子どもの外遊びの時間を減らす」のは要注意

「感染症に気にして子どもの外遊びの時間を減らす」のは要注意

昨今では新型コロナウイルス感染症の影響もあって、子どもの外遊びを控えるファミリーもいらっしゃいます。もちろん、まったく外に行かないということはないにしろ、遊びへ行く回数や場所に考慮している家族は少なくないはず。

入園前・入学前の成長盛りに運動量が減ると、どのような影響があるか森田先生にお話ししていただきました。

運動をさせることが心身を健康に成長させる

子どもの健康に運動が有効なのは言うまでもないこと。当然、運動量は筋肉や身体の成長と密接に関係しています。ただ、見逃せないのは体だけでなく心の健康にも運動が大きく影響していることです。

「6〜17歳を対象としたスポーツ教育の調査では、筋力が平均以下の子どもは精神状態が1〜3倍悪かったと報告されています。この研究ではその因果関係には触れられていませんでしたが、大人でも有酸素運動をすることで精神状態が改善されることは立証済み。それらを踏まえると、運動は子どものメンタルに影響を与えている可能性は高いと言えます」

加えて、小児科医などによる研究では「思春期にチームスポーツを経験した人は、うつや不安障害の発症割合が経験していない人に比べて低かった」とのこと。友達との運動を通じて自己肯定感が高まったと推測されています。

アドバイス:運動を通じて成功体験を積み重ねてあげよう

せっかく運動させるなら何か習い事をさせたい! と考える保護者の方も多いと思います。メンタルヘルスの観点で考えると、基本的に子どもが好きな運動ならなんでもOK。チームスポーツが良いというデータもありますが、子どもに合わせてあげることを優先すると良いそうです。

さらに、子どもがスポーツを好きになるコツとしては「初めは簡単に達成できる目標を用意すると良い」と森田先生。例えば、水泳なら顔に水をつけるなどを最初のゴールにし、少しずつ難しくしていきます。「まずは成功体験を積ませてあげることが運動への意欲だけでなく子どもの成長も促すと思います」と、自身の考えを教えてくれました。

「〇〇してはダメ!と叱責する」のは即刻やめる

「〇〇してはダメ!と叱責する」のは即刻やめる

幼稚園や小学校で子どもが上手く生活できるか、保護者なら心配ごとが尽きないもの。親としてはトイレに自分で行けたり、授業で座ってい続けられたりするようにトレーニングしてあげたいのが本音でしょう。

しかし、なかなか覚えてくれない場合、ついつい語気が荒くなってしまう方もいらっしゃるかもしれません。そんな厳しいしつけの恐ろしさについて、森田先生に解説いただきました。

強く叱責することは子どもの心身を傷つける

しつけであったとしても、子どもに体罰を与えると脳が萎縮します。アメリカで行われた研究では、前頭葉の中前頭回や前帯状皮質の容積が平均で14〜19%も減少していたそうです。前頭葉は人間の思考に大きく関わります。体罰は子どもの性格すら変える恐れがあるのです。

強く叱責することは、言い方や言葉にもよりますが、体罰と同じく子どもの大きな悪影響を与えます。子どもを脅かしたり、ガッカリしたりするなど、子どもの心を傷つける可能性がある行為はすべてNG。子どもに精神的な圧力を与え、ストレスを与えると心の病気だけでなく、健康をも阻害するそうです。

「アメリカの疾病予防管理センターは、子ども時代に辛い経験がすればするほど癌や肝臓病などにかかる割合が増えると発表。ストレスが病気を誘引する原因となると考えられています。さらに最近ではストレスによって、実際に炎症を引き起こすこともわかっています」

アドバイス:頭に血が昇ったらタイムアウトを試してみる

子どもが言う通りにできなくて感情的になりそうなら「タイムアウトと呼ばれている方法を試してみると良い」と言う森田先生。元々はアメリカの小児学会が2〜5歳の子どもがかんしゃくを起こした時にオススメしている対処法ですが、大人にも効果があります。

  • 「××(悪い行動)をやめないとタイムアウトにしますよ」と警告
  • 行動を繰り返すようなら部屋の静かな場所に連れて行く
  • タイマーで時間を計り、年齢×1分間、その場所にいさせる

これが子どもに行うタイムアウトの手順。大人が行う場合は(1)を省いて、自分で静かな場所に行き、リラックスしてクールダウン。本を読んだり音楽を聞いたりして冷静を取り戻すのです。そして、アレもコレもと教えるのでなく、本当に重要なことだけに絞って教えてあげるのが良いそうです。

「子どもの前でパパとママが口論する」のは控える

「子どもの前でパパとママが口論する」のは控える

育児・家事をはじめ、生活するうえでパパとママの意見が合わないというのはよく聞く話。 そういったときは当然、きちんとした話し合いが必要です。

ただ、そう言った会話を子どもに聞かせるのは良いことなのか……。パパとママの関係が子どもに影響を与えるケースを解説いたします。

親の不仲は脳に悪影響を与える

パパとママの口論については正確なデータはありません。しかし「精神的な不適切な経験が、子どもに悪影響を与えることは確認されています」と森田先生は言います。

「自分が体罰を受けていなかったとしても、DVを目撃した子どもが後頭葉にある視覚野の容積が約6%も減少していました。見たくないものを見ないようにするため、脳が変わってしまったと考えられます」

当然DVとまではいかなくても親同士が感情的になって罵り合った場合、相応の影響があると想定されます。逆に、建設的な議論であったり、話し合いが多少ヒートアップしてもきちんと仲直りする姿を見せたりすれば、子どもに負荷をかけずに済むでしょう。

アドバイス:子どものためにも家族で幸せになろう

当然ですが、口論にしてもケンカにしても子どもの前ですることではありません。そもそもですが、子どもを成長させるに最も重要なことは家族が幸せであることだと思います。

例えば、パパが休日にダラダラしていたとしましょう。その横に、家事に子育てに大変なママがいて家庭の雰囲気がトゲトゲするなら子どもにとってマイナスです。しかし、パパもママも楽しげな家族のリラックスタイムであれば問題なし。子どもの精神衛生上はプラスと言えます。

つまるところ、子どもの健やか成長には「家族全員が幸せであること」が大前提。パートナーと向き合うことが、良い子育ての第一歩なのです。

もりたまりこ
森田麻里子

東京大学医学部医学科卒業。長男の夜泣きに悩んだことから睡眠についての医学研究を調査し、赤ちゃんの睡眠と健康をサポートする「Child Health Laboratory」を設立。著書は『子育てで眠れないあなたに 夜泣きドクターと睡眠専門ドクターが教える細切れ睡眠対策』(共著:伊田瞳/KADOKAWA)や『東大医学部卒ママ医師が伝える科学的に正しい子育て』(光文社新書)など